「は?」

明らかに不機嫌な声の彼は、ジロリと私を睨む。

「いや、女の人だよ?」

少し笑いながら訂正すると、彼はまたチラリとこちらに目線をやり、「女の人?」と首を傾げた。

「そ。なんかね、ボーイッシュな感じなんだけどね、顔綺麗だしね、優しいし、かっこいいの」

夕紀さんのことを思い浮かべて話すと、勝手に本音が溢れていく。

私こんなこと思ってたんだ、と自分でも恥ずかしくなるくらいに。


「ま、女の人なら心配ないか」

ホッとしたように呟いた彼は、車で流れている曲を口ずさみだした。

その様子に私も少しホッとして、流れていく外の景色を静かに見つめた。


夕紀さん。
きっと私は、この時にはもう、貴方に惹かれていたんだね。