車の中、特に会話もなく携帯を見ていた。
SNSに更新されている夕紀さんの記事。
『彼女が迎えにきてくれた、大好き』
写真つきの記事をただ見つめているだけなのに、モヤモヤとした気持ちが支配する。
「それ誰?」
信号待ち、和樹が携帯を覗いてきた。
悪いことしているわけでもないのになぜか焦る気持ちと隠したくなる気持ち。
「あ、えっと」
「誰?」
怪訝そうな顔でジッと見つめられて、すぐに冷静になった。
そうだ、別になんもないじゃない。
「バイト先の社員さんだよ。前にさ、女の人でかっこいい人いるって言ってたでしょ?性同一性だったみたい、彼女もいるんだって」
私が早口でそう言うと同時に信号は青に変わり、和樹は前に視線を向き直した。
「その人がそうなんだ?写真で見たら全然男の人だね」
和樹はそう言いつつも敵対心はないようで、機嫌は治っていた。