「これ、可愛い」
駅前のビルで、直兄と服屋さんを巡る。
立ち止まって見るワンピースは、どれも春らしくて可愛いものばっかりだった。
「直兄、退屈しない?」
「してないよ。」
直兄はたまに、店内のワンピースを手に取り、それと私を交互に見て、もともとあった場所に戻す。
「あんまり、ピンと来ない。」
「あ、直兄、待って」
直兄はいくら可愛いワンピースを見ても納得しなくて、店から店へとスタスタ行ってしまう。
このワンピース、可愛いのにな…。
ぼーっと直兄の背中を追いかけたら、
「わあっ」
急に直兄が立ち止まって、背中にぶつかってしまう。
「ちょっと、びっくりした!」
「このは」
直兄の視線の先を追ってみたら、それは、浴衣屋さんだった。