「ねえ、ドキドキしてる?」

夜、夜景が見えるビルの最上階で、私の手をとる男性。

「うん…」

ドキドキなんて、するわけない。

「手、冷たいね」

そう言って体を寄せ、指を絡めてきた。

ほのかに感じる、お酒のにおい。

やっぱり、気持ち悪い。

好きになんてなれない。

「ごめん、もう、帰んなきゃ」

「なんで?もう少しだけ一緒にいてよ」

そう言って、私の髪を撫でる。

こいつ、少女漫画の読みすぎなんじゃないの。

「きれいな髪だね」

気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!

「ごめん、もう、帰るから!」

「ちょっと…!」

急に立ち上がって歩き出す私に、男性は動揺したらしい。

追いかけてきたけど、その手を振り払った。

もう2度と、触れられたくない。

わかってる。私が悪いんだ。この人が悪いんじゃない。

普通の恋ができない、私が悪いんだ…