コンコンッ

私の部屋の扉をノックする音。

「ヴァンか？入れ。」

私がそう言うと、ヴァンが姿を現した。

「何だ？どうした？」

「実は、『クラリス様』がルイ様をお呼びになっておられます。」

「母上が、私を？珍しいな。よし、行くぞ、ヴァン。」

すると、ヴァンが、

「実は、『ルイ様一人』でと。そうクラリス様が仰られまして‥‥‥‥。」

声を潜めて、ヴァンがそう言う。

「私一人で？」

「はい。」

「そうか。分かった。母上のところへ行ってくる。」

私がそう言うと、ヴァンは、

「行ってらっしゃいませ、ルイ様。」

そう言って、送り出した。

母上が、私を『呼ぶ』ことは、かなり珍しいことだった。

私の母・クラリスは、実は、稀に見る『エンジェル・ヴァンパイア』だった。

『エンジェル・ヴァンパイア』とは、光の属性を持ち、生まれれば、一生、ヴァンパイアたちから、憂い敬われる存在だった。

それをいい事に、母上は、勝手気ままにしているが、だが、それを上回る聡明さも持ち合わせていた。

そして、何より、超美女だ。

女好きのヴァンパイアの長である、父上が見初めたことだけはある。

ルイは、ヴァンパイアの長の息子だった。

そして、冷徹で、傲慢な性格でもあり、かなりプライドが高い。

コンコンッ

母上の部屋の扉をノックする。

すると、

「入りなさい。」

綺麗なソプラノの声がそう答えた。

ガチャリッ

母上の部屋の扉を開け、中に入った私が目にしたのは、金髪に深い蒼の瞳の超美女である母・クラリスと、その傍らに立つ、この『ヴァンパイアの城』では、今まで見たことがなかった、黒髪に銀色の瞳の超美少女がいた。

母・クラリスが引き合わせた、その超美少女こそが、後にルイの『運命の相手』となる『者』であったが、ルイはまだ、そのことに気づいていない。