私の研究結果があるゼミ室。
もう今日でお別れするんだ。

4年間通ったこの大学に未練なんて…バリバリあります。

5年前、高校3年生の受験は失敗に終わった。
推薦から一般まで全部で受験回数6回。
その中でも一番最低ランクの大学に来た。

入学式が憂鬱でしかなかった。

まぁでも結局なんだかんだで充実していた。
就職も鳬なく不可もなく…といいつつ、希望していた職には何とかつけた。

もっとあぁすればよかったな…っていう恒例の後悔なんていつものこと。

「なつみー早く!」

あぁ、あと10分で卒業式。
これが終わればほんとに終わりだ。
何もかも。そう、何もかも。

私はとにかく終わりが見えないことが嫌いだ。
勉強も恋愛も…

その次に嫌いなのは自分の生涯を恋愛に費やすことだ。
人生の中で、タイミングが合うなら恋人と仲良くすればいい。
だけど、それによって夢や将来を邪魔されるのは気に入らない。

よく言うでしょ?
「自分は裏切らない」
その言葉通りだ。恋なんて、愛なんてなかなか一生続くものじゃない。
結婚した時にやっと「一生仲良くしていきたい」って言えるんだと思っている。
とりあえず、人生設計は立てている。その中で、うまく、上手に付き合える方とお付き合いすればいい。

「なつみ~」

あと5分で終わる。
あたしの4年間。

先輩と付き合った時間も。
1年の時に波長が合った先輩。

いろいろ教えてもらった。
勉強から恋愛まで。
私の初めてをほとんどさらっていった先輩。

顔がイケメンだったわけじゃない。
身長が高いわけじゃない。
頭が特別いいわけじゃない。
運動がめちゃくちゃできるわけじゃない。

ただ、私のことをしっかり好きでいてくれた。
私にはそれで十分だった。

どこが好きなわけでもない。
私を好きでいてくれてたところが一番好きなところ。


『これで第62回 卒業式を終わります』


「おぉ…なつみ…ちゃんと連絡してよ~」
泣きながら訴えてくる友達。
それにきちんと応答をする。

−卒業式終わった?いつものところで待ってる−

こうやってちゃんと律儀に来てくれるところ。

大好き。
「なつみ、卒業おめでとう」

ダントツで声がいいわけでもない。
どちらかというとちょっと高めの濁った声だ。

「ありがとう」

そうやって、うつむきがちに答えると苦笑いする。
たぶんこの人は私が思っていることがわかるみたい。
ねぇ、そうでしょ?じゃないとこの4年間…たった4年、されど4年。
あなたに捧げたのです。

「いつ行くの?」
「1週間後」
「急だね…何も言ってくれなかったんだ」
苦笑いの顔を崩す気はないんだろう。
「ごめんね」
さみしい。
「ふふ、ま、しゃーないよ」
笑って言ってるけど、さみしそうな顔しないでよ。
「ねぇ、もうちょっと考えれない?何も今すぐじゃなくてもいいじゃん?」
「ごめん、それはちょっと期待に沿えない…」
「そっか…最後まで菜摘は菜摘なんだな。」
吹っ切れた笑いに変わった。
あぁ、この人と青春を謳歌で来てよかったって改めて思う。

「先輩。別れてください」
「しゃーない。」

それから私たちは別々の道を歩いた。
恋愛で将来を諦めるなんて馬鹿馬鹿しいっていったことを今日くらい後悔させてください。

先輩は九州で働いている。私は就職先が関東だ。
つまり遠距離恋愛となる。
べつに遠距離恋愛が悪いわけではない。
この遠距離恋愛には終わりが見えない。
無理してまで出してもらった4年制大学から就職したのにちょっと働いて結婚するのでやめます。なんて言えない。
だからといって先輩をこっちに呼ぶのは違うと思う。


夕日で輝くゼミ室。
私の4年間から、お別れします。



別れは怖くない。
怖いのはこの時間を忘れてしまうこと。
この時間をどうにか記憶にきれいに残したい。




さようなら。
また新しい時間を過ごします。


―これで終わり―
*あとがき*

初めまして、草津奈流です。
第一弾は切ない系…
え?普通1つ目は明るいものから行こうよ!って今思いましたww
でもふとこうゆうことを考えたりなんかしちゃったりするのです。

これからも短編をちょっとずつ増やして、長編を書いて行ければと思っています。
これから、どうぞよろしくお願いします。