も一度天井を見上げ、はふぅって大きくひとつため息をついた。

 本当に不思議な夢。
 ――だって、ほら。まだ彼に触れられた感触が残っている。
 引き締まった彼の体だって覚えてる。私の名前を呼ぶ彼の声も覚えてる。

 うわーん。これって相当重症な欲求不満よね? 
 解消したくても、今、付き合ってる彼氏なんていないし。
 これからもこんな風に悶々とした朝を迎えなきゃいけないわけっ?


「……でも……カッコ良かったなぁ……」

 気が緩むと、すぐに私の頭の中では夢の中の彼とのらぶらぶなシーンが再び再現され始めてしまう。

 顔はよく見えていなかったけれど、無造作にウェーブがかかったミディアムの髪に、ちょっと無精髭のようにも見える口元と顎に生えた髭。
 こんなワイルドな感じの男の人なんて私の周りにいないし、もしかしたら芸能人か雑誌で見たモデルさんなんかを無意識にイメージしちゃっていたのかも。

 ベッドの棚の上に置いた目覚まし時計をちらりと見ると、アラームをかけた時間まではまだ2時間位ある。くふふ、と喉を鳴らして笑って私は布団を頭から被って目を閉じた。

「夢でもいいや。さっきの続きが見れますよーにっ」

 って、枕にしっかりお願いしたのに二度寝の夢に彼は現れず。代わりに、箒をぶんぶん振り回しながら「家賃払えないなら、今すぐ出てけー!」って追いかけられてる夢をみた。