息子って聞いて、一瞬だけど私の中から『お化け怖い!』って気持ちが吹き飛んでしまう。――だって、どうみても桜子さんと鳳也さん、親子ほど年が離れているようには見えないもの。息子というよりは弟って言った方が全力で頷けちゃう。
親子と知って、私は改めて遺伝子の凄さを実感してしまう。こんなに綺麗な人が生まれるってやっぱり同じ血のなせる技なんだなぁ。そういえば、鼻筋の通ったところといい、涼し気で理知的な目元といい、やっぱり似ているところがたくさんある。
そんなことを考えながら桜子さんと握手を交わしていると、桜子さんは鳳也さんの手を取り、するりと握手のバトンタッチ。
え? え? ええっ!?
いきなりのスキンシップに私は心臓が跳ね上がったような気がした。
ドキドキドキドキ。――そんな風に鼓動が早くなっていくのに連れ、あの夜の夢がリアルに蘇ってくる。
この手で頬を包まれてキスされて、この手で抱きしめられて、この手で……、
(そこまでぇっ!!)
頭をブンブン振って、私は夢の回想に思い切り急ブレーキをかけた。なぜだか変な妄想膨らませていると、繋いだ手を通して鳳也さんに通じちゃうんじゃないかって焦ってしまう。
ちらっと鳳也さんの顔を盗み見してみたけれど、相変わらず目元口元、共に動じる気配も見せない涼し気な表情。
薄く形のいい唇は理知的で、この唇で夢の中みたいに名前を呼ばれたら、私、どうなっちゃうんだろ?
そんなことを考えていたら、繋いだ手がすっごい汗ばんきてるのがわかった。
――だって、夢のことを引いても、こんなイケメンさんと手を繋ぐなんて、私の人生の中で一度もなかったんだもん。乙女としたら、殿方と手を繋いだときどんな態度を取ればいいのっ?