「分かった、すぐに支度する」
カバンの中に教科書とか詰め込む。あ、筆箱忘れかけてた。
お待たせ、って声をかけて中学校を出る。
「んで?今日も外食な訳ですか、満月サン?」
財布を持ってるからか、零希が訊いた。
この中学校は買い食いは禁止されてる。事情がなきゃ許可されない。俺みたいに。
「ん、双子も……行く?」
「行かない」「お金ないし」
残念、と呟いて横断歩道で止まる。信号は赤になったばかり。
運が悪い。もしかして、今日は厄日だったんじゃないだろうか。
双子と別れてさっさと家に帰る。こんな時は家で大人しくしていた方がいい。
「ただいま」
返事が返ってこない事を知っているのに言った。
でも、その日は違った。
『おかえり』
何か顔が似てる人達がいた。誰この人達。
「満月っ!お兄ちゃんだよ、分かる?」
「兄さん、満月が赤ちゃんの時しか会ってないんだから分からないよ」
「おー、その制服結構いいトコの中学のだろ!すげーっ」
「……どうした?満月?」
何か赤っぽい茶髪の男が俺の頭を撫でた。温かい。
「混乱しちゃった……?」
「無理もないな、会ってないし。でも……お兄ちゃん寂しい!」
「黙れ柚月」
「はーくんがひどいっ」
「勝手に変なあだ名を付けないでください、バカ兄貴」
「敬語!?……って、こらっ。お兄ちゃんと呼びなさい!」
「うるせえよバカ兄貴~」
「ひっくんも!」
何だか置いてけぼりにされたので、とりあえず荷物を置きに部屋に行った。