「わかってますよ。ついでに、さっきの質問の答えは、俺も美都さんと同じです。ライバルが許嫁だろうと、ハチミツ王子だろうと、関係ない。美都さんが誰を想おうと、俺は美都さんのことが好きだから」
彼のまっすぐな言葉に、思わず胸が熱くなった。
そんな風に自分の気持ちに正直に、堂々としていられる上倉が羨ましい。
「なんか……上倉のくせに、カッコいい」
照れ隠しに皮肉を言ってみると、上倉はははっと明るく笑う。
「美都さん、それ喜べねー」
「嘘。褒めてるのに」
「あーあ。俺って結局、ただの後輩から抜け出せねぇんだな……」
がくっとうなだれた上倉だけど、深刻な雰囲気はなかった。
その語も他愛のない会話をしつつ、会社の最寄駅まで歩いた私たち。
上倉はときどきドキッとする発言も挟んできたけど、基本的には気まずい空気にならないように気を遣ってくれて、それがありがたかった。
「じゃあね。お疲れ様」
駅に到着すると、彼とは乗る電車が反対方向なため、ホームに続く階段下でそう挨拶した私。
しかし上倉はなぜか無言で、しばらく悩んだような表情をしてから、口を開く。
「俺……美都さんに無理矢理振り向いてもらおうとか、そんなことは思ってないんだけど。ただ、美都さんが、泣くのはいやなんだ」
真剣な眼差しで、上倉が語りかけてくる。
