ザワザワ…



人混みとパレードの歓声にかき消されて聞こえなかった声。



でも今は、ちゃんと平野の声が聞こえた。



「…後ろ見て」



電話越しではなく、後ろから平野の地声が聞こえた。



後ろを向くと、スマホを耳に当てている平野がおった。



「…ひ、らの…?」



マスクをズラして、私の方を見た。



「…遅いんやって。気付くん」



…夢…?



きっと夢なんや。



平野の事考えすぎて、幻覚まで…



「…聞こえてんの?」



カツッ…



私の顔にずいっと顔を近付けた。



「…平野?」


「…平野やで?」


「…ほ、本物なん…?」


「フッ。バーカ。俺は一人しかおらんわ」



ふにっと私の両頬をつまんだ。



…痛い。



「夢ちゃうやろ?」


「…夢ちゃう…」



我慢してたのに、色んな想いが込み上げていっぱい涙が溢れた。



「…平野や…」


「何泣いてんねん、笑」


「…何で泣いてるん?」


「…だっ、だって…」



色んなこと考えて、色んな想いがあって…



「私なんか…仕事の邪魔なんちゃうかって…」



沢山の女の子が平野の事好きなのに、私だけが平野の事独り占めしたいなんて…。



「…邪魔な奴、探さへんわ」