タッタッ…



今、何でこんなに走ってるんやろ?



息を切らして、あの人を探してるんやろ?



「…ひ、平野っ!」



何で、あの人に、こんな聞きたいことがあるんやろ…?



「…は?何?」



ゴチャゴチャした原宿系の本屋におった。



「…何で怒ってるん?」


「…何も、怒ってへん」


「…嘘つくん下手すぎやで」



棚に並べられた商品を適当に見ては置き、見ては置き。



平野は私と目を合わせんかった。



「…嘘だと思いたいんなら、そう思っとけばええやろ?」


「…あのさ、」


「まだなんかあるん?なんやねん」



カタンッ



「…私の事、好きなん?」


「……」


「…なーんて。冗談やで、笑」



…ビックリした。



いつもみたいに、すぐに、「ブス」とか、「勘違いすんな」って言われるんかと思ってた。



「るきちゃん待たせてるから、私行くね?」



ゴチャゴチャした店から出ようとした時、



「…行くなっ…」



…へ…?



私の腕を掴んで、何か言いたげな顔をしてた。



「…お前…さ、」


「…うん」


「…好きならもっと好きらしくおってや…」



…?



それってどういう…?



「俺のこと好きなら、好きな素振りぐらい見せろや…」



その時、平野が私の身体を優しく抱きしめた。



…な、にこれ…?



私夢見てるんかな…?



平野が、私を抱きしめてる…?



「……」


「ひ、人に見られたらまずいって…」


「そんなんどうだっていい。もう離さへん」



…え!?



わ、私平野に抱きしめられてるんや…。



「…俺、お前のことで…頭パンクしそうになんねん…」


「…平野、私の事好きなん?」



抱きしめられたまま、私は平野に小声で聞いた。



「…嫌いやったら相手にしてないやろ?」



…っ…



何で?



いつもはあんな冷たいのに…



急にこんな優しくなるん…?



いつどこで撮られるか分からんのに、私は平野を抱きしめ返した。



「…俺のこと好きなんやろ?」


「……好きちゃう」


「…ツンデレ」



ボソッとそう呟く平野。



いや、あんたの方が…



「……」



抱きしめられて、ドキドキして…



平野にドキドキして、おかしくなりそうな自分がおった。



「…お前今日中に絶対電話しろ」


「…疲れて寝てるやんか」


「絶対出るに決まってるやん。約束やで?」



何で上から?



なんて思っても、その言葉にいちいちドキドキする。



平野にドキドキする自分がいる。



「…ほな、今から仕事やから」


「…うん」


「電話、いつでも待ってるからな?」