ザワザワ…



「いらっしゃいませー」



学校帰りの学生が来たり、カップルが来たり。



皆まだ可愛く思えた。



「ええなぁ、彼氏…」



きっと、あの人に100万回好きって言うても、100万回の嫌いが返ってくる。



「あ、お前ビラ配り行ってきな」


「は!?夏目くんが行ってやー」


「なるべく動きたないから」



給料ドロボー…



ビラを持ち、店の外へ出た。



「はぁ…」


「…あっ」



…あっ。



丁度平野たちが来たとこやった。



…片方の子名前分からん。



「ブスのビラなんか誰が受け取るんや」


「アンタに関係ないやろ?」



でも、来てくれたことが嬉しかった。



「あ、これ俺も持ってるわ」



え?



私の付けてるバングルを見てそう言った。



「ほんま?」


「何でそんなんで、嘘付かなあかんねん」



うわっ…



ちょっと嬉しい…!



「なぁ、いつの間に仲良くなったん?」


「仲良くなんてない!」


「ほんまやでー…。誰がこんなブスと…」



平野が眉間にシワを寄せ私を睨んだ。



負けずと私も睨んだ。



「ほなあの店員さんと付き合ってはるんすか?」



へ?



あの店員さんって…



「夏目くん?あの人は…。ないっないっ!!」


「ほな、俺とかは?」


「…え?」



肌の黒い男の子がそう言い、自分を指差した。



「お前これがタイプなん?」


「え?可愛いやん!」



ニコッとはにかむその笑顔。



確実にモテるやんな〜…



「紫耀は好きな子おるやん」



…え…?



「…いつの話やねん。買うもん買って帰るで」



…なんや。



好きな人おったんや…



「……」



何、私勝手に傷ついてるんやろ…。



「そら、キツイわなー…」


「…綺麗な子なんやろなー…」



ブスブス言うのも、きっとその子と比べたら私なんか屁でもなくて、ほんまにウザいからなんやろなぁ…。



「…失恋してしもた…泣」



街ですれ違って恋をして、あの人に会うためにバイトを始めて…。



また出会って、フラれて…。



「…恋なんかせんかったらよかった…」



バイト終わり、フラフラと歩きながら帰った。



何でか泣きたくて、でも嫌いなのに、好きって気持ちもあって…。



…好き…。



「うっ…うぅ…」



好きになっても、あの人が私を好きになるなんてありえん。



そう分かってながらも、涙が止まらんかった。



タッタッ…



「…美央?」



ビクッ。



「うぅ…夏目くん…泣」


「うわっ!どしたんや?」


「夏目ぐううん…泣」



泣きながら話す私の話を、夏目くんは最後までちゃんと聞いてくれた。



「ほー。平野君には好きな人がおるんや」


「…失恋…やんな…」


「そやけど、アイドルやから、好きな人ぐらいおるやろ?」



まぁ確かに普通の男やし…



「お前はどうなりたいん?」


「…どうって…」


「平野君と、どうなりたいん?彼女なりたいんやろ?」



…私は…。



「…だって奇跡やん、そんなん…」



好きな人が自分のことを好きで、その想いが通じるって…。



「…平野と、恋がしたい…」



平野の特別になりたかった。