「美央、話しかけてきたら?」


「え?だ、ダメやって!」


「この機会逃したらもう会えんのちゃう?」



うっ…。



そうやんな…



カツカツ…



「…あっ!」



男の人がこちらへ歩いてきた。



「これの黒ある?」


「あ、えっと…」


「…あのさ、」


「…は、はい…」



その後、彼は私に衝撃的な言葉を言い放った。



「ブスなんやから堂々と接客すれば?」




…え?



今、この人私に…



「オドオドしてるんめっちゃキモい」



どうやら、頭の思考がまた停止したようや。



「視界に入るな、ブス」



チーン…



「うぐっ…うぅ…うぅ…」


「ひでー…」



なんて言いながら顔が笑っとる夏目くん。



あんなブスブス言われるなんて…



「あの子、アイドルなんやて」



店長がスタッフルームでそう言った。



は?



てか店長知ってたん!?



「ジャニーズJr.ってやつかな?」


「…ジャニーズやったんや…」



でも私のことブスブス言うけどあの人やって…



…イケメンやぁー…はぁ。



「つまり、お前アイドル好きになっとったんやな…笑」



絶賛笑みがこぼれる夏目くん。



「…あっ!」



オーダーメイドのやつ渡し忘れた…



「明日も来るから」



ほな…また来るんや。



あんな人やったなんて…



「はぁ…」



私の1年越しの片想いは、呆気なく終わりそうです…。



「夢見すぎたんやな」


「…アイドルなんてまともなんおらんやん、泣」



あっ。



ジャニーズやったら調べたら出てくるかな…



ピッピッ…



「…悪魔」



動画を見て驚いた。



天然キャラで笑顔がトレードマーク。



「おまけに年下…」



何か全てが嘘みたい…



私、1年もこの人に片想いしとったん…?



「…平野…紫耀…」



私が恋をしたのは、最低で、最悪な年下のアイドルやった。