「僕が死ぬ前に紅雪は殺せちゃうよ?」

「っ!」



総司がその刀を、体の動きを止める。


止まるなっ!


声は出せない。


口を開いても空気しか漏れ出てくれないから。



「がはっ」



血を吐きながら倒れる総司を見ながら私は何も出来ない無力感だけをかみしめていた。


ねぇ総司。


どうして、そんなに私の事を守ろうとするの?



「ねぇ、どうしてそんなに紅雪を守ろうとするの?

ただ拾っただけだろ?

捨ててしまえばいいのに。役に立たない彼女なんてさ。

別に誰も君を責めやしないさ。そこにいる紅雪だって」



私の言葉を代弁するように由羅が言う。


そうだよ。動けない私を守らないでさっさと勝負を終わらせてしまえばいい。


死ぬかもしれないなんて脅しに怯まずに。


そうすればあなたの傷は少なくて済むはずでしょ。



「誰が役に立たないって……。

ちゃんと茅野……ちゃん、は役に立ってる。

それに、彼女は物じゃないっ!」



「……………ゃ……」



……そんな優しい事言わないで。


何にも出来ない私なんて気にしないでよっ。


ボタボタと地面に落ちる涙が自分の弱さを見せびらかしているようで。


悔しさとか、悲しさとか、虚しさとかが入り混じって沈殿していく。


私の中の何かが綻び始めていた。