先生と進藤さんが近付いてきた。


「新谷、すまなかった。

田中がそんなこと言ったなんて気付かなかった。

悪い奴じゃないんだが、最近伸び悩んでいたな…

許してやってほしい」


先生が苦笑いを浮かべてる。


その隣で、進藤さんは知らん顔。


「許すも何も…

ヘタクソなのは本当のことですから」


先生は、あたしのことなんて見てないと思っていたけど、ちゃんと見ててくれたんだね。

それだけで十分。


ワタワタと手を振り、後ずさった。


「新谷、ありがとう」


先生は、あたしの顔を見て笑った。


さっきの鬼の形相がウソのようだ。


「じゃ、先生、私たち練習します」


「先生はちゃんと走ってるか見てくるから!

進藤、バレー部に入る気になったらいつでも言え!」

そう言うと、体育館を出て行った。