〜 遥 視点 〜
僕は、アキラたちから離れ
一人、ワインを飲んで外を眺めていた
彼女のフリだけでよかったんだと思うけど……
アキラには、色々助けてもらったし…
まあ、いっか……
僕は、アキラをちらりと見ると
他の人たちと嬉しそうに笑っていた
いつもの嘘の笑みではなく……
心からの笑みで……
『こんなとこで一人……
寂しくないか…?』
「……………誰…?」
僕は声のする方に目を向けると……
アキラたちと引けを取らないような
整った顔立ちの男が僕に微笑んでいた
『随分酷い彼氏だな?
彼女を放っておいて、みんなと楽しく話しているなんて』
「……………仕方ないよ…
僕とアキラは、そういう関係じゃないし…
それに、今は……
僕なんかが邪魔しちゃ悪いと思うし……」
『へぇ………
俺に、そんなことまで言っていいんだ?
誰かにバラしちゃうかもよ?』
「それはないよ」
『ん?どうしてだ?』
イケメンは、僕に少しずつ近づくと
僕から目を離さず、綺麗な瞳で僕を見つめてきた
「あの中を裂くことは出来ないでしょう?
僕なら、絶対にしない
嫌いな相手以外なら」
『確かに……
あの中を裂くようなことは出来ないな……
嫌いな相手以外なら』
イケメンは、フッと笑うと
僕の持っているグラスを奪い
ワインを飲んだ
「それで?
あなたは、誰なの?
僕に何のよう?」
『名前は、片桐 迅
歌舞伎町でホストクラブを営んでいる
裏では、何でも屋みたいなことをしている
何のよう?って聞かれても…な?
俺は、最初……
アイツの両親から、あんたを堕とすように依頼されたんだよ
悪い虫を駆除してくれ…と……』
「えー
僕って、虫扱い〜?」
『アイツの両親から見たら虫に見えたんだろ?
俺なら、悪魔に見えるけどな?
人の心を奪うことも出来るし
壊すことも出来る……悪魔に…な?』
「迅だって、そうでしょう〜?
アキラを助けた善人の僕を誘惑しようと企んでいたくせに〜
それに、迅って……
僕と同じ匂いするんだよね……
好きでしょう〜?
人を堕とすこと」
『大好き♡』
だろうね………
ホストもしていて
こういう仕事も引き受ければ……
金と人を堕とすことが好きな人間しかいない
それに、僕の態度にも何も言ってこないってことは……
最初から、僕の性格に気づいていたってことだ
侮れない男だよ……