「この手紙は、さっき、田中先生が言われたとおり処分されるはずのものでした。
あの頃の事を、昨日の事のように覚えているわ。
想太さんから、ある日をさかいに、ほぼ毎日、可南子さんへ手紙が送られてきた。
私は宛名の文字を見てすぐに同級生の男の子だと分かりました。
まだ、字がとても幼かったから・・・
そして、可南子さんからの手紙も増えだした。
この学校始まって以来の事だったのですよ。
こういう事例は、今までなかったの。
だから、ああいう厳しい処分になってしまったのね・・・」
シスター堀は、複雑な笑みを浮かべながら話し続けた。
「あの頃の私は、まだシスターになったばかりで寮のこまごまとした仕事は全部引き受けて頑張っていました。
でも、可南子と想太さんのこの手紙だけは捨てることはできなかった・・・」