「痛い…」


「柚子はな、涙より笑顔の方が似合うんだ」


「先輩……。キモいです」


「心配した俺がバカだった……」



ハァとため息をついている先輩を見て、思わずクスクス笑ってしまった。



「先輩、ありがとうございます。先輩があの時私を連れ出してくれなかったら、今頃泣き顔を西岡先輩に見られるところでした」


「好きな人に涙見せるのは嬉し涙だけだ。それに好きな人の言動で一喜一憂出来るのは、それだけ本気ってこと。お前はすげーよ」


「先輩、どこかに頭ぶつけたんですか……!?」


「お前なぁ……」


またデコピンしようとしてくる先輩を避けて、ケラケラ笑った。


気がつくと、さっきまでのモヤモヤした感情が嘘のように消えていた。