「なつ、俺達は邪魔らしいから早く帰ろっか」



こういう時だけ下の名前を呼び捨てで呼ぶ彼に、胸が痛くなる。


ずるいっ、ずるいよ……。


呼び捨てなんて、彼はちよちゃんにしかいつもしないくせに私にも言うから。

だから、少しだけ胸が高鳴る自分もいることが嫌だった。

これはあくまでも、そんな気持ち無いなんてこと分かっているのに。




「うん、邪魔しちゃ悪いもんね」



彼に微笑みかけながら私は言った。

私は、多分彼に対して甘いのだと思う。

じゃなかったら、私は相当なお人好し。

どっちも嫌だけれど、まぁ、これも私が選んだ道なのだから。



「じゃあね、ちよちゃん、眞斗さん」



手を降って、サヨナラをする私と2人。

彼はただ、微妙な顔でそれを見ているだけ。


あー、もう。

いっそ、ぶっちゃけちゃえばいいのに。


無茶だと言うことは分かっているし、出来ないことだということも分かっている。

けれど、彼の辛そうな顔を見ているのがどうしても嫌だった。

彼の笑顔に慣れていた分、少し戸惑った。



「ばいばーい!あ!なっちゃん、今度遊ぼうねー!」