「あ、うん、ここ。ありがと」



離れて行く手が、少し悲しかった。

私の手にはさっきまで彼が持ってくれていたかばんが乗せられ、また頭をぽんっとした。


ずるいんだってば……。



「じゃあねー」



さっきまでとは打って変わった彼に、胸が痛くなる。


無理して笑われても、こっちは笑えないよ。


たぶん、彼にそんなこと言っても彼は聞く耳を持ってはくれないのだろう。



「ば、ばいばい」



彼の歩く後ろ姿を見て、思ったんだ。


そっか、都筑くんも前に進もうとしてるんだ。

それならしょうがないかな。


自分が利用されても、彼のためにそれがなってくれるなら私の役目は彼の彼女役をすることなんだろうって。



「都筑くん!私、都筑くんの彼女役やる!」



後ろ姿に叫んでみると、彼は後ろを振り返り目を大きく開けた。

けれど直ぐに柔らかく笑って、



「ありがとう!」



なんて言うから私はまた思うんだ。


だから、辛いのに笑わないでってば。


って。