都筑くん、いつまでここに居るんだろう。

まだ帰らなくていいのかな。


既に5時を過ぎていて、図書室にいるのは私と彼の二人だけ。

いつの間にか目の前の椅子に座っていた彼は、大きな欠伸をしている。



「ねー、そろそろ帰らないの?」



先に聞いてきたのは、彼だった。

頬杖をついて左手にはめてる腕時計を見ながら言う彼は、ほんとどんな格好でも似合う。



「悩んでるの。都筑くんは?」



都筑くんが帰らないのか、悩んでるんだけどね。


きっと私の思っている通りには意味を取らなかったであろう彼の顔が、

パァッと明るくなって、またこのパターンか、と苦笑いが出そうになるのを堪えた。



「じゃあさ、折角だから一緒に帰ろうよ」



まるで語尾に音符がつくように言った彼の言葉には、拒否権など全く含まれていないように感じる。


何だかんだ言って、都筑くんも結構強引だよね。

あの時だって意外と強引でびっくりしたし。



「そうだね、帰ろっか」



開いていた本に栞を挟んで閉じ、急いで帰る準備をする。

彼は本を読んで居なかったからか、準備が早かった。


決して、私と都筑くんが付き合っているわけじゃない。

だって、都筑くんの想い人は都筑くんの幼馴染だから。

とっても可愛いくて、優しいちよちゃん。