「うん、そっかごめんね」



彼は謝ると、腕を掴んでいた私の手を離して握った。

驚いて横を見てみると彼もこっちを見ていて、優しげに微笑んでいた。


そ、そんな顔ずるい……っ。


慌てて顔を逸らす私を、彼が見ていたかはわからない。



「秋月さん、どこに住んでるの?送るよ」



でも、平然とそんなこと言えるのだから彼はきっと見ていなかっただろう。


今の顔、絶対見られたくない……。

てか、何で私の顔熱いの。


私の顔は、もうすぐ冬だというのにも関わらず熱く火照っていた。



「〇〇町にあるピザ屋さんのすぐ側、です」



あーあそこら辺、と言って彼は分かったのか通りすぎようとしていた道を右に曲がった。

暫く歩く内に、さっきまでの怖さが無くなっていて寧ろどこか安心してる自分が居た。


都筑くんの手あったかい。


彼の手は自分より一回り大きくて、少し角ばっていて、暖かった。



「……あの、さ。何で私に、彼女役やってなんて言ったの」



沈黙が続く中、それを破ったのは私で、その時彼の顔が一気に曇ったのを、私は見逃さなかった。


都筑くん、やっぱり彼女役なんて欲しくないんじゃ……。