「ごめん、俺は好きじゃないんだ」



茜色の光が差し込む図書室の一角。

静かなその空間に、声は悲しくも響き渡った。



「うん。そっかごめんね」



意外とあっさりしている返事。

相手が相手だからなのかもしれない。

走って廊下へと繋がるドアに向かう彼女。

彼女の瞳が一瞬光っていて、あぁやっぱり強がってたんだと納得した。



「あ、やっぱり秋月さん居た」



受付カウンターの奥の部屋の椅子に座って本を読む私の顔を、

覗き込みながら笑顔を見せる彼は、さっき女の子を酷くふった噂の人。



「都筑くん、また告白されてたね」



都筑くんの告白現場を見るのは、これで6回目。

この図書室は古くて人気も無い。

静かすぎるくらい静かなこの場所で告白なんてしたら、どこに居ても聞きたくなくても聞こえてしまう。



「なんか、毎回ごめんね」



目尻が下がって、苦笑い気味な彼。


何回も見すぎて、もう慣れたよ。

なんて言ってしまったら、都筑くんはどんな反応するのかな?


ちょっとしたイタズラ心が芽生えたけれど、彼はやっぱり笑顔は崩さずに対応するのだろうからつまらない。



「ううん。平気」



そう言って私が微笑んでしまえば、彼も微笑む。

彼の笑顔を見ると、どこかほんわかと温かくなるのはいつものこと。