翼の香りがする。

抱きしめられるとほっとして落ちつく。

私の唯一の居場所なんだ。

もっと色々知りたいけど、やっぱり聞けずにいた。

だってさっきも笑ってたけど、悲しそうな顔してたんだもん。

嫌なこと思い出させちゃったかな。

そんな顔はもう見たくない。

翼にはいつも笑っててほしい。


「待ってろ。もー少ししたら俺も自分でアパート借りるつもりだから。そしたら一緒に住もうな」


「翼……」


「俺はお前をひとりにはしねぇーから」


優しく私の髪をなでる。

グリーン色の瞳が綺麗で、吸い込まれそうになった。


ピリリリリ……


突然翼のスマホが鳴った。


「芽衣子……?」


スマホの画面を見て翼が呟く。

芽衣子さんって……レディースのだよね?


「わりぃ、ちょっと出るわ」

「う、うん」

電話に出ると、さっきまでの優しい顔とは一転、総長の顔になった。