私は言葉をなくした。
父親に捨てられた……?
「13才くらいの時だっけかな。学校から帰ったら家はもぬけの殻でさ。親父はどっかに逃げたらしくて。あん時の喪失感っていったら……忘れらんねえ。そのあとダチと街うろついてたらPhoenixの今の幹部のやつに拾われて、今の俺があるって感じだな」
淡々と話す翼に驚いた。
辛い話のはずなのに、笑ってる。
「やっぱひいた?」
「ううん……びっくりしただけ。お父さん、どこにいるかわからないの?」
「しんねぇ。別に会いたいともおもわねぇし」
翼のお父さん、ひどい……虐待していただなんて……
「美羽は?家出してんだろ?帰んなくていーのかよ」
急にうちのことを聞かれてドキッとした。
「うんっ! うちは前から仲悪くてさ。私がいなくなっても探しにすらこないもん。娘がどこで何してるかなんてどーでもいーんだろうね」
翼がタバコを消して、私を抱きしめた。
「こんな可愛い娘放っとくなんてなに考えてんだか」