「あの怪文書の送り主は誰かって事よ」
「ああ……」
それは野田が言う通り、俺はあまり気にしてない。2課の部下やパートナーさん達を見ると、誰がやってもおかしくないように思えるんだ。そして、誰でも同じだと思っている。人なんて、どいつもこいつもみんな……
「私もね、あれを見せられた時は、あんたと一緒に人間嫌いになりかけたわよ」
「え? そうなのか?」
それは全くの初耳だったんで俺は驚いてしまった。
「でもね、そんな事ないと思った。そうは思いたくないと思ったわ」
「と言うと?」
「あんたはさ、あの一件で人はみんなずるいとか、汚いとかって思ったんでしょ?」
「まあな」
「それは違うと思う。依田君は異常なまでに裏表が激しい子で、相手をした女の子は分別が無さすぎで、あの怪文書を匿名で送りつけた人は姑息だけど、その3人でしょ? たまたまあんたの側に3人の不届き者がいただけ。そう考えられないかな?」
「ん……」
「そう考えようよ? そうでもしないと、生きてくのが辛いだけでしょ? そう思わない?」
「そう、かもしれない」
「そうよ。確かに人を百パーセント信じるのは危険だと思う。だから一定の距離を置くのはむしろ懸命だと思う。でも、ある程度は信じようよ。ましてや好きな人の事はさ」
「そうだなあ……」
「あんたは過去ばっかり見てるけど、前を見ようよ。人生、まだまだ先は長いんだからさ。私も人の事は言えないんだけど、前を見る事にした」
「そうなのか?」
「うん」
野田は、とても穏やかそうに微笑んでいた。なんだか、聖母マリア様みたいだな、なんて思った。
「なんかさ、かなり吹っ切れた気がするよ。おまえさ、そういう話はもっと早くしてくれないか? そしたら今頃は……」
「ん? 今頃は、なに?」
「いや、何でもない」
危うく俺は言いそうになってしまった。今頃は、おまえと結婚してたかもしれない、と。
「ああ……」
それは野田が言う通り、俺はあまり気にしてない。2課の部下やパートナーさん達を見ると、誰がやってもおかしくないように思えるんだ。そして、誰でも同じだと思っている。人なんて、どいつもこいつもみんな……
「私もね、あれを見せられた時は、あんたと一緒に人間嫌いになりかけたわよ」
「え? そうなのか?」
それは全くの初耳だったんで俺は驚いてしまった。
「でもね、そんな事ないと思った。そうは思いたくないと思ったわ」
「と言うと?」
「あんたはさ、あの一件で人はみんなずるいとか、汚いとかって思ったんでしょ?」
「まあな」
「それは違うと思う。依田君は異常なまでに裏表が激しい子で、相手をした女の子は分別が無さすぎで、あの怪文書を匿名で送りつけた人は姑息だけど、その3人でしょ? たまたまあんたの側に3人の不届き者がいただけ。そう考えられないかな?」
「ん……」
「そう考えようよ? そうでもしないと、生きてくのが辛いだけでしょ? そう思わない?」
「そう、かもしれない」
「そうよ。確かに人を百パーセント信じるのは危険だと思う。だから一定の距離を置くのはむしろ懸命だと思う。でも、ある程度は信じようよ。ましてや好きな人の事はさ」
「そうだなあ……」
「あんたは過去ばっかり見てるけど、前を見ようよ。人生、まだまだ先は長いんだからさ。私も人の事は言えないんだけど、前を見る事にした」
「そうなのか?」
「うん」
野田は、とても穏やかそうに微笑んでいた。なんだか、聖母マリア様みたいだな、なんて思った。
「なんかさ、かなり吹っ切れた気がするよ。おまえさ、そういう話はもっと早くしてくれないか? そしたら今頃は……」
「ん? 今頃は、なに?」
「いや、何でもない」
危うく俺は言いそうになってしまった。今頃は、おまえと結婚してたかもしれない、と。