タクシーに揺られなが俺は思った。高宮は、ちゃんと理解しているのかどうかと。

 この流れだと、普通は俺達がやる事はひとつだ。そう、やるのだ。

 しかし高宮は、本当にそれが解っているのだろうか。高宮は32なんだし、それぐらいは解るだろう。と思う一方、リクルートスーツを着ると見かけ二十歳になるわけで、たぶん処女だし、変人だし、どうなんだろう。

 高宮は、実は解ってないんじゃないかと。友達の家にでも泊まる感覚なのかと、そんな事を思ってしまう。

 しかし仮に高宮が解ってなかったと知った時、俺は我慢出来るのだろうか。可愛すぎる高宮がごく側にいて、手を出さない、なんて事が俺に出来るのか?

 いや、それは無理だ。ただでさえ俺は、酒を飲むとスケベになる。俺だけじゃないと思うが。そう言う今だって、高宮とのあれやこれやを想像するだけで、気の早い俺の下半身は、早くも準備を始めようとしているのだから。


 当然ながらアパートへはあっという間に着き、俺は高宮の大きなバッグで前を隠しながらタクシーを降りた。


「どうだ。狭いし、散らかってるだろ?」


 俺が部屋の明かりを点けると、高宮は珍しそうに部屋のあちらこちらに目をやった。


「そうでもないと思います。それに、私のアパートより広いですよ?」

「そうか?」

「はい。これなら……」

「ん?」

「なんでもありません」


 高宮は今、何かを言い掛けたようだが、何を言おうとしたのだろう。“これなら”に続く言葉は何だったんだ?
 それが気になるが、まあ、いいか。


「高宮、何か飲むか? あ、コーヒーはどうだ? っていうか、俺が飲みたい」

「あの、課長? それよりも私、お風呂に入りたいです。シャワーでも構いません。アレをする前に、よく体を……」

「へっ?」


 俺が心配しなくても、高宮はちゃんと解っていたらしい。それにしても……

 高宮の顔は、可哀想なぐらいに真っ赤だった。まるで、熟れたトマトのようだった。