ところが、高宮はなかなか口を開こうとしなかった。何を、かはわからないが、迷っているように俺には見えた。


「高宮、何でも聞いてくれていいんだぞ?」


 俺は時間が気になり、そう言った。すると高宮は、綺麗に澄んだ漆黒の瞳で俺を見つめながら、ようやくその形のいいピンク色した唇を、開いた。


「私は……小島さんを知っています。小島敬太さんを」


 俺は誇張でも何でもなく、本気でズッコケそうになった。固唾を飲み、待ちに待った高宮の話がそれか?

 よりによって、あの鼻持ちならない部下の、小島の話なのか? しかもフルネームだし。


「あ、そう」


 高宮には悪いが、俺はそんな気のない返事しかする気が起きなかった。

「彼とは、小学校の時、同じクラスでした」

「へえー、そうなんだ。そう言えばおまえ達は歳が一緒だもんな? それにしてもすごい偶然じゃないか。なあ?」

「そうですね。びっくりしました」


 と言った割には、高宮の表情は堅かった。普通、少しは笑ったりするところだと思うのだが。


「私と小島君達は、よく河原の公園で遊んでいました」

「ふーん、仲が良かったんだな?」


 遥か昔とは言え、あの小島と高宮が仲良く遊んでいたと思うと、俺は無性におもしろくなかった。ところが……


「あまり仲は良くなかったと思います。私、小島君達に……虐められていたので」