「申し訳ありませんでした!」


 玉田はそう言い、俺に頭を下げたのだが……

 こいつ、涙声じゃなかったか?

 顔を上げた玉田を見ると、案の定、目が涙で潤んでいた。まずい。これはまずいよ。“鬼課長三つ目の伝説ね!”なんて、野田に言われかねない。


「解ってくれればいいんだ。考えてみれば、勤続2年で教育係は早かったな?」

 とは、全然思ってないが。

「つまりは俺の判断ミスだ。高宮の教育係は俺がやる事にする」

 最初からそうすれば良かったんだよな。

「次の新人の教育係はおまえに頼むから、それまでにスキルを上げておいてくれ」

 一般常識もな。


「はい。すみませんでした」

「しょげるな、しょげるな」


 俺は、玉田の肩をポンポンと叩いてその場を去った。

 チッ。なんだよ。これじゃ俺が毛嫌いする“優しい上司”と変わらないじゃないか。まったく、高宮のせいで調子が狂うぜ。


「玉田君。高宮さんが可愛くて喜んでたのに、残念ね?」

「ほんと、そうですよー」


 お二人さん、しっかり聞こえてますけど?

 玉田という男は、何年経ってもダメかもしれない。やはり“優しい上司”なんて、するもんじゃねえな。


 そんな事を思いながら、俺は高宮の元へ向かった。さてと、俺はどう高宮と接すればいいんだろうか……