でも、返事の前に強い力で引っ張られる。

私の部屋を通り越して、
優也君は部屋の鍵穴に鍵を挿している。

私の力では拒否できないことがわかって
仕方ないから諦める。

「ただいまー」

ドアを開けて、優也君が先に中に入る。

おかえり、って返事がなくて。

親はいないんだろうな。

普通なら、二人きりってことで
ドキドキするのかもしれないけど。

優也君のうちは、小さい頃のお母さんが家を出て行ったからむしろ哀しくなる。

優也君は私の手首を離す。

「菜々子、おやつ食べよー」

寂しいのかな、って思った。

なんでだろう。

でも、優也君の顔に書いてあるの。

優也君、妹がいるんだよね。

だけどまだ優也君が本当に小さい頃に
事故で死んでしまって。

それが口論になって離婚。

そりゃあ、寂しいよね。

ごめん、冷たくして。

罪悪感に襲われた。