その夜はあんまり寝れなかったけど
時間通りに目を覚まして学校の支度を始めた。

今思うと、本当に私、何したんだろ、
って恥ずかしさとドキドキが渦巻くんだけど。

でも、後悔はしてない。

私は朝ごはんは食べない派。

本当は体に悪いんだろうけど、
友達の隣に並ぶと太って見えちゃって。

その友達っていうのが林 可菜(はやし かな)。

背も小さいけど驚くほど華奢で
『女の子』って感じで可愛い。

髪の毛を念入りに梳かす。

私はボブヘアーで前髪は斜めわけ。

斜め分けだと、少し大人っぽいの。

私と優也君の事情を知ってる可菜が教えてくれてからは斜めわけを保ってる。

本当はロングにも挑戦したいんだけど。

顔も綺麗に洗って メイクは禁止だからメンソレータムのシンプルなリップで我慢。

あれもこれも、優也君に大人っぽく見られたくて…というか、恋愛対象には入りたいから。

制服のスカートは限界まで短く。

本当は太いし出したくないけど、
校則に従うほど真面目ちゃんじゃない。

「あ、やば」

そろそろ時間で、ギリギリに家を出る。

エレベーターを待ちながら、
もういっかい手櫛で髪を整える。

どこで優也君に会うか、わからないもんね。

でも、今日は五階で停まってる。

遅れるよーっと不満を出し切ってると
やっと動き出して、安心する。

エレベーターが下がってきたところで
窓から乗ってる人の顔が見えて…。

「あ」