「あ」

綿原 菜々子、中学2年生。

帰り道に前の方にいる高校生の男女に見慣れた後ろ姿を見つけて顔が紅くなるのが分かって
もっと恥ずかしくなる。

見て見ぬ振りをしたんだけど。

もう1回目線を戻しちゃう。

彼女かな。

世で言う大人っぽいJKさんが
私から見て近所のお兄ちゃんこと西藤優也(さいとう ゆうや)君と戯れている。

ただの友達としてのボディータッチなのかは
よく分からなくて心配になる。

優也君は私の好きな人。

ただの年上の憧れってわけじゃないの。

ほんとに好き。

小さい頃から同じマンションの隣の部屋として家族ぐるみの付き合いだった。

小さい頃はふたりで近くの公園に行って
遊んだり、冒険に行ったり。

いつも手を繋いで仲良くしてた。

その頃は優也君は人見知りで。

近所に友達がいなかったんだよね。

それなのに大きくなってから
友達が増えて意地悪になっちゃって。

かっこよくもなったんだけど
少し寂しいよ。

背も高いし。

子供扱いが嫌なの。

視線に気がついたのか、優也君に戯れていたお姉さんが振り向いた。

慌てて目線を下におろしたんだけど…。

「あ、菜々子」

気づかれちゃった…。