ふたりにしか、わからないこと……。



幼なじみで、家族のように過ごしてきて。



誰よりも近くで見てきた。



湊のことを、他の誰よりもわかってるつもりでいるし。



あたしのことも、きっと湊がいちばんわかってる。



これが恋だと気づかなかったら、どんなに幸せだったかな。



「湊のこと……大切だから。大切すぎて失いたくない」



「湊くんだって、結雨ちゃんのこと大切に想ってるよ?」



奈乃は、真剣な表情であたしを見つめる。



「湊くんに口止めされてたけど……少し前、毎日のように湊くん、朝早くに学校へ来てたでしょ?」



「え?うん……」



「あれは、結雨ちゃんを傷つけた犯人を捕まえるためだったんだよ?」



「え……?ちょ、ちょっと待って。なにそれ。犯人て……?」



「結雨ちゃんを傷つけた犯人は、来瞳先輩だったの。奈乃も偶然その場所に居合わせたから」



一瞬、頭の中が真っ白になった。



ウソでしょ?

来瞳先輩が犯人……?一体どうして……?



「結雨ちゃんに嫉妬してたみたい。来瞳先輩、二階堂先輩のことが好きなんだって」



「でも二階堂先輩は、“深珠は俺のことなんとも思ってない”って、そう言ってたけど……」



「失ってから、大切な人だってことに気づいたんじゃないかな」



奈乃は、自分の足元を見つめながらつぶやく。



「一度すれ違ってしまった恋を元に戻すのって、想像以上に難しいことだと思うの」