あたしは壁にもたれて、ため息をついた。



「ハッキリと本人に聞いたわけじゃないけど……」



この話、他の人に話すのは初めてだ。



「たぶん、湊は……自分がお母さんに捨てられたって思ってるんだよね」



「捨てられた?」



「小さい頃ね、湊のお母さん出て行っちゃったんだ。男の人と暮らしてる」



「そうなんだ……」



「湊が人に冷たい態度とるようになったのも、お母さんのことがあったあとなんだよね」



あの頃から湊は、人に……特に女の子に対して、冷たい態度をとるようになった。



その中でも、自分を好きだと言って近寄ってくる女の子には、いっそう冷たく接していた。



「いまは昔ほどじゃなくなったけどさ」



だから余計に怖い。



あたしが湊のことを好きだって、もしも湊にバレたら……



冷たくされるに決まってる。



いままでどおりでは、絶対にいられない。