「じゃあね、バイバイ」
「如月さんってさ」
顔も見ずに教室を出て行こうとすると、再び話しかけられて足が止まる。
なに?
まだ何か言いたいわけ?
無言で振り返ると、今度は真顔であたしを見つめる長谷川君がいた。
甘いマスクに、よく通る低音ボイス。
小顔で制服をゆるく着崩して、腕には数珠のブレスレット。
体格だっていいし、程よく筋肉がついた色気のある体をしている。
改めて見ると、悔しいけど長谷川君はイケメンの部類に入る。
一見爽やかだけど、どこかチャラチャラしたようにも見えて裏がありそうな気がする。
実際、かなり遊んでいるらしい。
何を考えているのかわからないから、あたしは長谷川君みたいな人は何となく苦手。
そういえば前にクラスの子が、長谷川君は誰に対しても決して本気にならないなんて言ってたかもしれない。
あたしと同じで長谷川君もクラスでは目立ってるから、色んなウワサがある。
べつに、信じているわけじゃないけど……。
っていうか、長谷川君のことはどうでもいい。
あたしには関係ないんだから。
「生きてて楽しい?」
「は?」
淡々と紡がれた言葉に目を見開く。
生きてて……楽しいかって?