ツイてないと言えばそうなのかもしれない。
目立たないように息を潜めていても、こうやって見つかってしまうんだから。
そっと立ち上がり、スカートを軽く手で払ってから校舎の中に入る。
やば、急がなきゃ。
今日はとんだ時間のロスをしちゃったから、間に合わないかもしれない。
早く早く……!
焦る気持ちから階段を足速に駆け上がり、教室に戻った。
ーーガラッ
「!?」
ドアを開けると、中に人がいて驚いた。
そこにいたのは、クラスでも人気がある爽やか系男子の長谷川(はせがわ)君。
いつもニコニコしてて掴みどころがないっていうのが、彼に対するあたしの印象。
「如月(きさらぎ)さん、まだ残ってたんだ?」
長谷川君は優しく笑いながら、机に掛けてあったカバンを持って立ち上がる。
そして、ゆるふわパーマの茶色い髪を揺らしながら近付いて来た。
背が高くてスタイル抜群。
だけど、どこかシリアスな雰囲気を漂わせる彼。
「うん。先輩から呼び出し食らってたから」
「呼び出し、ね。なんか恨まれるようなことでもしたの?」
長谷川君はニコニコしているけど、何となくその瞳は冷たくて、あたしのことなんて興味がなさそう。