メールや電話も『面倒だから』っていう理由であまりしてくれないし。
中学の頃は学校で顔を合わせるからそれでも良かったけど、高校が離れてしまった今は寂しくて仕方ない。
あんまりしつこく催促すると、怒りそうだから強く言えなくて。
寂しさを押し殺して海里の前では笑っていた。
だけど、連絡がないと何をしているのか気になったり、常に海里のことが頭から離れない。
今日だって、ずっと考えてたっていうのに……。
海里はそうじゃなかったみたい。
「結愛?」
「え?あ、なに?どうしたの?」
考えていたことが悟られないように、とっさに笑ってみせる。
「ボーッとしてんなよ」
「あはは、ごめんごめん」
笑っていないと嫌われるような気がして怖かった。
海里に嫌われたらおしまいだから。
やっと見つけたたったひとつの居場所を、あたしは失うわけにはいかないんだ。
「海里はどこ行きたい?」
「んー、どこでもいい」
どこでもいいって、一番困る返答だ。
ちょっとは考えてくれてもいいのにな。
そんなことを思いながら横顔を盗み見る。
するとーー。
ちょうどその時、ズボンのポケットに入れていた海里のスマホの着信音が鳴った。
面倒くさいからといって、初期設定のまま今まで変えられたことのないありきたりな音。
「あー、もしもし」
ポケットからスマホを出した海里はすぐに電話に出た。
かすかに漏れる男の人っぽい声にホッとしつつ、唇をキュッと噛み締める。
「うん。え?マジで!?今から?いやー、今はちょっと取り込み中だから」
海里はチラッとあたしを見て、電話の相手に申し訳なさそうに言った。
「えっ?マジかよ。いいの?ちょっと聞いてみるわ」