三浦奏多(ミウラカナタ)くん。


180はありそうな長身に、艶のある綺麗な黒髪。切れ長の目に薄い唇。

とにかく、カッコいいんだ。


初めて会ったのは、高校の入学式の翌日。

今日みたいな大雨で、お母さんも仕事で送れなかったから仕方がなくバスで行くことにした。


バスを待ってると、屋根の中に走って奏多くんが入ってきた。

すっごいびしょ濡れで……


あまりにも濡れてるし、バス停には私たちの2人以外に誰もいなかったから。


まだ他人だったけど、思わず顔を合わせて2人で笑ってしまった。


それからは、雨の日には2人しかいないバス停で学校での話や家での話もして……




いつの間にか、好きになっていた。





彼は、バスが来る10分前にやって来る。

雨の日にだけ、ここのバス停に来る。そして、同じバスに乗る。


私はこのためだけに、雨の日だけはバスで学校へ行くの。


「おはよ」


緊張してるのをバレないように普通に話しかけた。

本当は、すごく緊張してるんだけど…


「はよ。すげー雨だな」


奏多くんは緊張してる様子なんか少しもなくて…

少しだけ、ズキっとする。


「奏多くん少し濡れてない?傘さして来ればいいのに」


「それはお互い様な?」



白い歯を見せて笑う奏多くんは、雨に濡
れてたってすごくサマになってる。


むしろ、色気が増してていつも以上にカッコよく見える。



「私は家が近いからいいんです〜」


「だから、お互い様だろ。俺だって家近いし」


…あ、そか。


私の家と奏多くん家のちょうど間くらいにバス停はある。

つまり、私の家からバス停が近ければ奏多くんの家からも近いということになる。


「真央は学習能力が低いな」


「…普通に頭が悪いって言いなよ」


「ははっ。冗談だって!そんな怒った顔すんなよ」



怒った顔すんなって…こうゆう顔してなきゃにやけちゃいそうなんだよ!



横を見ると、奏多くんはスマホをいじってる。もう少しでバス来ちゃうのに…
もっとお話ししたいのに…



奏多くんは同じバスに高校の友達も乗っているようで、バスに乗るとその友達の元へ行ってしまう。


だから、奏多くんといれる時間は今だけ。たったの10分ほどしかないんだ。




だからこそもっとたくさん話したいのに……