放課後、燈子ちゃんはクラブの顧問と相談し、ギプスがとれるまでクラブを休むことに決めた。
入部希望の新入生によけいな不安を与えないためだそうだ。

淋しい気もするけど、その分私は毎日一緒に登下校しよう。

……彩乃くんに会いづらくなるけど。



<というわけで今日はお家元に寄りません。明日からも未定。ごめんなさい。また連絡します。>

ラインで彩乃くんにそう送信して、私は燈子ちゃんと帰る。

はじめての松葉杖、燈子ちゃんは途中で腕が痛くなったのだろう。
ふと気づくと、声をあげず、黙って泣いていた。

私は荷物を持ってあげることしかできず、一緒に泣きじゃくった。

とてもいつもの距離は歩けないので、裏門から出てバスに乗る。
最近のバスはステップ部分が下りてくるので、何とか乗れたけど、やっぱりけっこう大変。
タクシー通学というわけにもいかないし。
当分しんどそうだ。

電車に乗って、やっと一息ついた。
あ、彩乃くんからライン。

<友達、俺と駅、一緒やろ?送るわ。駅で待ってる。>

送る?
またお継父さまが車を出してくれるのかな?
よくわからないけれど、燈子ちゃんと私が桂駅で降りると、確かに彩乃くんが改札口で待っていた。

「……大丈夫か?」
彩乃くんは、燈子ちゃんにか私にか、どちらに対してかよくわからないけれどそう聞いた。

「大丈夫じゃないわ。つらすぎる……。松葉杖がこんなにしんどそうなもんやなんて知らんかった。」
返答に困ってる燈子ちゃんに代わってそう言った私は、また落涙した。

「あほか、お前ちゃうわ。……えーと、藤木さんやったやんな?松葉杖はじめて?腕しんどいやろ?」
彩乃くんはそう言って、とりあえず私から燈子ちゃんの鞄を奪って持ってくれた。

「自転車置場、こっち?」
燈子ちゃんに場所を聞いて、彩乃くんは燈子ちゃんの自転車を取ってきてくれた。

「今、親父(おやじ)来てくれるし。あ、あれやな。こっちや!」
ロータリーに少し大きめのライトバンタイプの車が入ってきた。

「あ!お継父さま、こんにちは!いつもありがとうございます!」
運転席のお継父さまにそう声をかけてから、燈子ちゃんが車に乗り込むのを手伝った。
彩乃くんは燈子ちゃんの自転車を、車の中に積み込んでくれた。

「すみません、ご迷惑をおかけします。ありがとうございます。」
燈子ちゃんが申し訳なさそうに言うと、彩乃くんのお継父さまは豪快に笑った。
「遠慮せんでええ。困った時はお互いさまや。……てか、こんな綺麗なお嬢さんが困ってるのに助けへんかったら男ちゃうわ。」

お継父さまの言葉の巧みさに、つい、彩乃くんを見てしまった。

……彩乃くんよりずっと能弁なんだなあ、お継父さま。