「いいわ。上手に入ってる。そろそろ、師範のお免除もろてもいいねえ。今年は会に出ようか?」
師はそう言ってくれるが、私は返答に窮した。
まだ16才。
師範の看板をいただいたところで教えるつもりもないし、花嫁道具という感覚もない。
でも、お家元のお華の会に出すのは……楽しみかも。
5年前に1度出してもらったが、好きな花材を好きな花器に好きなように活けさせてもらえる喜びは格別だ。
あの時は、漆黒の水盤に松のお生花(せいか)と菊の三種活けという、およそ子供らしくない渋いチョイスで、お家元に苦笑されたのを覚えてる。
「今度はもうちょっと華やかなんにしいや。」
師にそう言われて、反射的に私は聞いてみる。
「極楽鳥7本を、」
「はい、却下!」
「……」
また却下されてしまった。
極楽鳥とは、極楽鳥花とも呼ばれるストレチア(ストレリチア)という熱帯地域の花で、鳥が空を見上げてるような気高さと華やかな色がかわいい。
「あんた、地味好みやのに、極楽鳥だけはえらいこだわるなあ。あんなん邪道やで。腕いらんやん。」
5年前も同じように言われた。
「腕もセンスもいると思う。先生みたいに極楽鳥ってだけでバッサリ切り捨てる人らに違う感想を覚えてもらいたいねん。」
……いつか言おうと温めてきた反論だった。
「別の機会にどうぞ。今度はあかん。お家元にアピールするんやから。」
玉砕。
あーあ。
「わかりました。ほな、なんか考えてきます。」
「華やかな難しいのんにしてや。」
師の言葉に私は引きつり笑いをして、辞去した。
週末。
お泊まり会は、言い出しっぺの遥香ではなく、なっちゅんこと奈津菜の家にお世話になった。
少し遠いけど、両親ともに医者で中規模な医院を開業してる奈津菜の家はとにかく広くて綺麗だ。
グランドピアノや、四畳半ぐらいの広い庭園付きトイレのある家なんて、私はここしか知らない。
……奈津菜曰わく、幼稚園から学園に通う子達の中ではむしろ貧乏な部類らしいけど。
同じ学校に通ってても、別世界だわ。
「で?遙香は何をもったいぶってんの?」
みんなでお風呂に入った後、パジャマパーティーに突入。
燈子ちゃんがポテトチップスを食べながら切り出した。
「……そう簡単に言えんわ。」
ニマニマと笑って遙香はそう言った。
「初体験した?」
半笑いで奈津菜がそう聞くと、遙香は飲みかけたコーラに咽(む)せた。
師はそう言ってくれるが、私は返答に窮した。
まだ16才。
師範の看板をいただいたところで教えるつもりもないし、花嫁道具という感覚もない。
でも、お家元のお華の会に出すのは……楽しみかも。
5年前に1度出してもらったが、好きな花材を好きな花器に好きなように活けさせてもらえる喜びは格別だ。
あの時は、漆黒の水盤に松のお生花(せいか)と菊の三種活けという、およそ子供らしくない渋いチョイスで、お家元に苦笑されたのを覚えてる。
「今度はもうちょっと華やかなんにしいや。」
師にそう言われて、反射的に私は聞いてみる。
「極楽鳥7本を、」
「はい、却下!」
「……」
また却下されてしまった。
極楽鳥とは、極楽鳥花とも呼ばれるストレチア(ストレリチア)という熱帯地域の花で、鳥が空を見上げてるような気高さと華やかな色がかわいい。
「あんた、地味好みやのに、極楽鳥だけはえらいこだわるなあ。あんなん邪道やで。腕いらんやん。」
5年前も同じように言われた。
「腕もセンスもいると思う。先生みたいに極楽鳥ってだけでバッサリ切り捨てる人らに違う感想を覚えてもらいたいねん。」
……いつか言おうと温めてきた反論だった。
「別の機会にどうぞ。今度はあかん。お家元にアピールするんやから。」
玉砕。
あーあ。
「わかりました。ほな、なんか考えてきます。」
「華やかな難しいのんにしてや。」
師の言葉に私は引きつり笑いをして、辞去した。
週末。
お泊まり会は、言い出しっぺの遥香ではなく、なっちゅんこと奈津菜の家にお世話になった。
少し遠いけど、両親ともに医者で中規模な医院を開業してる奈津菜の家はとにかく広くて綺麗だ。
グランドピアノや、四畳半ぐらいの広い庭園付きトイレのある家なんて、私はここしか知らない。
……奈津菜曰わく、幼稚園から学園に通う子達の中ではむしろ貧乏な部類らしいけど。
同じ学校に通ってても、別世界だわ。
「で?遙香は何をもったいぶってんの?」
みんなでお風呂に入った後、パジャマパーティーに突入。
燈子ちゃんがポテトチップスを食べながら切り出した。
「……そう簡単に言えんわ。」
ニマニマと笑って遙香はそう言った。
「初体験した?」
半笑いで奈津菜がそう聞くと、遙香は飲みかけたコーラに咽(む)せた。