「あきちゃん、何か、した?……指さされて噂されてたみたいやけど。」
古典の品詞分解を覚える下準備でまとめていると、奈津菜が首をかしげてそう聞いた。
「……あ~。」
私自身は容姿は十人並みだし、特に目立つ特徴もないのだが、生徒会書記なんぞをしてるせいで、学内ではそこそこ顔と名前を知られている。
この2日間、あの3人とあの車両に乗ったのだ……中にはうちの学校の生徒も交じっているだろう……遅かれ早かれ学内でも色々言われるようになるか。
「単に、普通に一目惚れの恋やってんけどね~、その友人らのペースに巻き込まれて進退きわまってる。どうしたものか。」
不思議そうな奈津菜に説明したけれど、彼ら3人を見たことのないなっちゅんは、朝の電車の状況を理解できないようだった。
写真はないけれど、先日の彼らの学園祭のポスター画像は携帯電話に入れている。
「美女と美丈夫と天使。」
そう言いながら見せると、奈津菜は私から電話を奪い、画像を大きくしてしげしげと見た。
「これが、遙香の目標くん?」
「うん、竹原義人くん。顔も頭もいいけど……まあ~、いい性格してはるわ。」
「確かにかっこよさそう。和服似合いそう?水もしたたるいい男?」
奈津菜に改めてそう言われると、そんな気もする。
「……で……あきちゃん?こちらさんもこちらさんも、私には女に見えるねんけど。」
え!そう?
奈津菜と私は頭を付き合わせて小さな画面を注視した。
私にはセルジュは天使に見えるのだが、奈津菜にはフランス人形に見えるらしい。
「まあ、どっちにしても綺麗やね。彫りも深そう。ハーフなんやっけ?」
「たぶん。聞いてへんけど、『セルジュ』って名前らしいし、そうちゃう?」
私がそう言うと、奈津菜は苦笑した。
「なるほどね。あきちゃんはこの迫力美女にしか興味ないわけね。一貫してるなあ。」
最後にクローズアップされた彩乃さんに、私はつい、へらっとにやける。
「なっちゅんも美女やと思う?」
「うん。すごーくあきちゃんらしい。やっぱりこういう中性的な美人さんが好きなんやねえ。でも現実にいてはってよかったねえ、髪の長い美形男子。……本気で、心配やったよ。」
奈津菜の言葉に感謝しつつも苦笑した。
「えー、でも、なっちゅんかて燈子ちゃんかて、浮いた話ひとっつもないやん。」
「うん、今はないねえ。女子校やから。でもちゃんと小学校の時は、同じクラスの子にときめいたよ。燈子ちゃんかてそんなに特殊な好みしてへんでしょ?」
……そうかもしれない。
「燈子ちゃんの踊ってるところにメロメロなあきちゃんを見てたら、将来は間違いなくヅカオタか腐女子やな、って思ってたもん。」
否定しきれない。
「しかし、この人何でこんなに髪を伸ばしてはるんやろ?バンドでも組んではる?」
奈津菜の素朴な疑問に、あらためて、私も首をかしげた。
古典の品詞分解を覚える下準備でまとめていると、奈津菜が首をかしげてそう聞いた。
「……あ~。」
私自身は容姿は十人並みだし、特に目立つ特徴もないのだが、生徒会書記なんぞをしてるせいで、学内ではそこそこ顔と名前を知られている。
この2日間、あの3人とあの車両に乗ったのだ……中にはうちの学校の生徒も交じっているだろう……遅かれ早かれ学内でも色々言われるようになるか。
「単に、普通に一目惚れの恋やってんけどね~、その友人らのペースに巻き込まれて進退きわまってる。どうしたものか。」
不思議そうな奈津菜に説明したけれど、彼ら3人を見たことのないなっちゅんは、朝の電車の状況を理解できないようだった。
写真はないけれど、先日の彼らの学園祭のポスター画像は携帯電話に入れている。
「美女と美丈夫と天使。」
そう言いながら見せると、奈津菜は私から電話を奪い、画像を大きくしてしげしげと見た。
「これが、遙香の目標くん?」
「うん、竹原義人くん。顔も頭もいいけど……まあ~、いい性格してはるわ。」
「確かにかっこよさそう。和服似合いそう?水もしたたるいい男?」
奈津菜に改めてそう言われると、そんな気もする。
「……で……あきちゃん?こちらさんもこちらさんも、私には女に見えるねんけど。」
え!そう?
奈津菜と私は頭を付き合わせて小さな画面を注視した。
私にはセルジュは天使に見えるのだが、奈津菜にはフランス人形に見えるらしい。
「まあ、どっちにしても綺麗やね。彫りも深そう。ハーフなんやっけ?」
「たぶん。聞いてへんけど、『セルジュ』って名前らしいし、そうちゃう?」
私がそう言うと、奈津菜は苦笑した。
「なるほどね。あきちゃんはこの迫力美女にしか興味ないわけね。一貫してるなあ。」
最後にクローズアップされた彩乃さんに、私はつい、へらっとにやける。
「なっちゅんも美女やと思う?」
「うん。すごーくあきちゃんらしい。やっぱりこういう中性的な美人さんが好きなんやねえ。でも現実にいてはってよかったねえ、髪の長い美形男子。……本気で、心配やったよ。」
奈津菜の言葉に感謝しつつも苦笑した。
「えー、でも、なっちゅんかて燈子ちゃんかて、浮いた話ひとっつもないやん。」
「うん、今はないねえ。女子校やから。でもちゃんと小学校の時は、同じクラスの子にときめいたよ。燈子ちゃんかてそんなに特殊な好みしてへんでしょ?」
……そうかもしれない。
「燈子ちゃんの踊ってるところにメロメロなあきちゃんを見てたら、将来は間違いなくヅカオタか腐女子やな、って思ってたもん。」
否定しきれない。
「しかし、この人何でこんなに髪を伸ばしてはるんやろ?バンドでも組んではる?」
奈津菜の素朴な疑問に、あらためて、私も首をかしげた。