ズキューン!
と、ハートを打ち抜かれた私は、そのままズルズルと座り込んでしまった。

窓の向こうで、彩乃くんが慌ててる。
私は、窓枠に手をついて何とか立ち上がり、小さくなる彩乃くんに手を振った。

やばいって。
ドキドキが止まらない。
頭の中が、彩乃くんでいっぱい。
消化しきれない!


翌日、遙香が謝ってきた。
「あきちゃん、昨日は……ごめん。」
「いやいや、こっちこそ結果的に、ごめん。遙香の目標くんって、竹原くんのことでしょ?」

遙香が苦笑した。
「やっぱりわかった?」

「うん。」
まあ、あそこまで露骨に遙香が媚びるのを見たら、ねえ。

「たぶん誤解されてるやろうから、ちゃんと言うとくけど~、私が好きなん、竹原くんとちゃうしな。そのお友達の梅宮彩乃くん。」

遙香はうなずいた。
「うん、聞いた。夕べ、義人が来た。」
……竹原くん、マメやなあ……クラスの打ち上げの後、夜遊びグループにも参加したんや。
「お茶室の不作法を怒られて、今度、みんなで『二太郎』くんに教えてもらうことになった。」

「へえ!それはいいねえ。『二太郎』くん、すごく綺麗な所作やったもん。さすが、って思ったよ。」
私がそう褒めると、遙香はちょっと変な表情になった。
「あ、そう。喜ばはるわ。伝えとく。……ヨリ戻したし。」

え!
「そうなんや。『三太郎』くんは?」

「継続。……それはいいとして~、うちの文化祭の後、義人があきちゃんを探してたのに、知らんふりしててんわ、私。ごめんね。」
遙香が、しょんぼりしてそう謝った。

「そうなんや。まあでも、いいよ、もう。……遙香が竹原くんのこと好きやったら、気分いいわけないもんねえ。」

私がそう言うと、遙香は涙ぐんだ。
「ちゃんと話せばわかったのにね。ごめんね。」

「や、ほんまに気にせんとって。一週間後にちゃんとまたご縁、繋がってるねんし。」
……深い縁……昨日、彩乃くんに言われた言葉を思い出して、私は勝手ににやけた。

「有縁千里ね。」
どこから聞いてたのか、奈津菜が横からそう言った。

「何?それ。」
遙香が聞くと、奈津菜は呪文のようにこう言った。
「ようえんちぃえんりーらいしぃやんふい、うーゆえんどぅいみぇんぶーしぃやんふぉん。」

「ますます、わからんやろ、それ。」
私は苦笑した。

「縁があったらどんなに遠く離れてても必ず会えるし、縁がなければめっちゃ近くにいても会えない、って感じ。ふっふっふっふっふ。」
遙香にそう説明してると、彩乃くんのことを思い出してしまって、また笑ってしまった。