こんな時に…あと1回勝てば全道大会出場が決まるというのに。

ここで怪我のことを言ったら…殆どの確率で次の試合は棄権だ。



だから俺はみんなの前で平然を装った。



試合後のアドレナリンが減っていく今となれば、足に激痛しか走らず、歩く度顔が思わず歪んでしまうほど痛い。



そんな状態でさすがに長沢達と同じスピードで歩くのは無理だ。



「…悪い、僕ちょっとベンチに忘れ物したから先に行ってて」



激痛に堪えながらも必死に笑顔を作る。



「おう!」



長沢達は俺の嘘に気付かずスタスタと歩いて行った。

だけど、ただ1人未菜だけは…俺のことを複雑な表情で見ていた。



そんな未菜から視線をわざとそらし、早くこの場から立ち去るよう促す。

そうすれば、未菜は先を行った。



俺は痛い足を引きずりながら、人がいない方へと向かう。



少し先には小さな公園がある。

そこで俺は常に持ち歩いていた、テーピングを足に巻き付けガチガチに固定した。



これなら。きっと大丈夫。

誰にも迷惑かけない。



その時、



「やっぱり…」



背後から声がした。



振り向けばそこには未菜の姿。