――「ホテルの前のバス、駅まで行きます?」 真依子の質問に、従業員は一瞬きょとんとした顔をする。 財布を鞄に入れながら、真依子はもう一度彼女に聞いた。 「あのバス、この辺の近くの駅まで行きます?」 真依子は満面の笑みで、出入り口に停まっている小さな観光バスを、指差した。 「はい。○×駅に……」 彼女は不思議そうな顔をしたまま頷いた。 「ありがとう」 真依子は足元にある旅行鞄を手に持つと、ロビーを後にした。――