母親に当たってもしょうがないのは分かっている。

 実際に、浩一のことは、家にまで連れて行き母親にも紹介していた。

 娘の結婚に期待していた親からすれば、一言欲しかっただろう。

 結婚はしばらくないですよ、と。

――はいはい、ごめんなさいね。余計なお世話だったわね。でもいいの? 相手の顔、気になるんじゃないの?――

 その言葉に、真依子はカッとなりそうになった。

「見たくもないわよ。そんなの」

 そうだ、見たくもない。

 浩一の隣で綺麗なウェディングドレスを着て笑っている女が、たとえ自分からかけ離れたタイプだとしても、自分に似ているタイプだとしても、知りたくなんてなかった。

――別れたのはいいけど、あんたそろそろ自分の年齢考えなさいよ。こんなこと言いたくないけど、いくら薬剤師で生活が出来るからって、子供が産める時期は限られてるんだからね。ほら、今は婚活とかいうのが流行ってるじゃない。あんたもああいうの始めたらいいんじゃないの?――

 そう来ると思っていた。

 浩一と付き合っているときから、結婚だの子供だの、それこそプレッシャーになるほど言われていたから、この流れは慣れている。

 もう少し、オブラートに包むとか、見守るとかできないのだろうか、この人は。