まだ雪は降っていないけれど、寒さが辛いこの時期は、私にとっては苦しい時期。
かじかむ手をポケットに入れて、思わず背を丸くして歩いてしまう。
マフラーをしていても顔が隠れないのだから、あまり意味無いなぁなんてことを思いつつ、早足で学校へと向かうと、
「りっちゃーん!」
そんな私の名前を呼ぶ可愛らしい声が後ろから聞こえて、思わず立ち止まった。
後ろを振り向けば、鼻を赤くして小さく走ってくる女の子の姿が見える。
そんな彼女を見て、思わずふふっと笑ってしまうと、それに気付いた彼女が少し眉を下げて心配そうに見つめる。
何でもないよ、と言えば安心して笑うから、それを見て私も安心する。
「おはよ、桃香」
「おはようりっちゃん!今日も寒いよね」
「そうだね。昨日はまだマシだったのに」
そう言うと、隣でうんうんと何度も頷いて同意する彼女の姿は、小動物のよう。