薄情な幼なじみをじぃっと睨んでいると、急に廊下が騒がしくなった。
見ると、廊下一面が大勢の女子生徒でうまっている。
…もうそんな時間?
これから、煩くなるわね。
「あーもうそんな時間?
こりゃ煩くなるね。」
全く同じことを考えていた夕雨と顔を見合わせると、私たちはイヤホンを耳につけた。
夕雨は音楽を聴きながら机にうつ伏せになる。
私は、携帯のアプリでシンデレラを見ながらも双眼鏡片手にグラウンドを覗く。
…この学園ってば、中々ピンとくる人がいないのよね。
これだけ捜しているというのに、どうして王子様は現れないの?
私、もうそろそろ現れてもいい頃だと思うんだけれど…。
時折目線を携帯の方に落としながら、元気にグラウンドを走り回る男子生徒を順番に観察していく。
あっ、あの人…。サッカー部の部長だわ。背が高くて、優しそうな人だけど何か物足りないのよね。
何ていうの? ひょろっとしてて王子様には不向きね。
…あの人も、一つ上のモテ男子。
黒く焼けた肌に、二カッと笑えばキラリと覗く八重歯。
だけど、何か物足りない。
胸のトキメキ?っていうのかしら。
やっぱり、ピンとくる人はいないのよね。
ーー『見つからないのが現実だよね。』
本当に、無理なのかしら。
さっきの夕雨の言葉をぼーっと思い出して、すぐにハッと我に返る。