「そんなワケないじゃん!単にそういう感じかなぁ…と思っただけ!お金持ちと庶民の恋ってワケあり風じゃん?だから…」


ゴクゴク…とグラスワインを一気飲みして、プハァーッと勢いよく息を吐く。
程良く酔いが回ってきた私は、止まる事なく続けた。


「ワケありの恋なんてしたくないよね…なんか切なくなりそうじゃん?」


そう思わない?と同意を求める。
羽田は私の顔を横目で眺め、まぁそうだな…と相槌を打った。


「上役との恋愛なんて基本あるワケないよね?…そんなのあったら、逆にお目にかかりたいもんだ!」


酔っ払いの戯言みたいになってる。
羽田は小さな丸テーブルに肘をついてボォ〜としている私の顔を眺めて聞いた。


「だったらお前は、どんな恋愛ならアリだと思うんだよ?」


バカにした様な言い方に、ふん!と鼻息を荒くする。
そんなこと聞かれても困る。だって私は………


「どんなこんなも、恋愛したことないから分かんなぁい!」


戯けて発した一言を羽田は思いきり笑い飛ばした。
あり得ん…とか、ガキ…とか、言いたいことを抜かしてくれる。


「お前さ、経験ないのにあるワケないとか言ってんのかよ!そう思うくらいなら、いっそワケありでもワケなしでもいいから恋愛してみりゃいいじゃん!…俺と」

「はぁ⁉︎ なんであんたと……」


同じ本屋で働く仲間で、唯一同じ独身だからって、それは手近すぎだと遠慮した。