「じゃあね~!また明日~!」


菅野は作り笑顔のまま改札を抜けてった。

あんな顔のまま帰すのなんて、俺のプライドが許さないんだけど……



「……あの不気味な笑顔見せられ続けるよりマシか。あんな似合いもしねぇ素振りなんかして、アホかあいつは……」


何処で仕込んできた笑いネタだよ…とツッコミ入れたくなったじゃんか。

初チューのこともあったから、余計なことは言うまいと我慢したけど。


夢見る乙女を演じたり、いきなり可愛い子ぶった言い方したり、らしくないことばっかして、それで恋愛してるつもりなんだか知らねーけど。


女らしくすれば、誰の好みにでも合うくらい考えてんのか?

…だとしたら、とんだ大間違いだぞ⁉

少なくとも俺は、そんなのに靡かねーからな。

似たり寄ったりの女なんて、その辺に転がってる石ころと同じだろ⁉


昨日は売り言葉みたいに恋を教えると言ったけど、あれは単に照れからくる言い訳で、ホントは前から菅野と付き合いたいと思ってたんだ。


ちっとも女らしくないヤツだけど、妙に気が合うし面白い。


それなのに人の噂を信じて、こっちの言うことは信じようともしない。


むかっ腹立ったから少し驚かしてやろーと思ったらあれだ。



ーーいきなり男の前で目なんか閉じるなよ。
思わずチューしちまっただろーが!

ぎゅっと目瞑ってる顔が可愛かったんだよ。

恋愛経験ゼロだって言う菅野のファーストキスの相手になりたかっただけなんだよ。